2015年7月21日火曜日

初めての時事ネタ

一応、国際関係論を学んでいる者として、集団的自衛権についても書いてみようかなあと。但し、賛成or反対についてではなくて、別の側面から。今回の安倍さんの答弁を見て邪推(笑)したことを書いてみる。

賛成派も反対派も見て見ぬふりをしているのかわからないけれども、今回の集団的自衛権の議論で核心的に重要なのは韓国と台湾である。武力行使が許容される要件として、「日本と密接な関係にある他国への武力攻撃により日本の存立が脅かされ」というのがあげられているが、北朝鮮による韓国への攻撃、中国と台湾との間の台湾海峡有事は間違いなく、「日本と密接な関係にある他国への武力攻撃」と言えよう。その時の国際情勢にもよるが、米軍の介入は必至である。その際に日本がどのように対応するのか。ホルムズ海峡の話ばかり出てくるが、本来はこの潜在的に緊張要素の蓄積した東アジア情勢を語る必要がある。
それでは、なぜ自民党はホルムズ海峡の話ばかりして韓国とか台湾の話をしないのか。まあ、台湾の話をしない理由はわかる。中国を無駄に刺激するし、アメリカも安倍総理が「台湾海峡有事を想定している」と公言するのは嫌だろう。こうした発言はアメリカが台湾海峡有事に参加することを示してしまうからである(アメリカの台湾有事に対する姿勢は本当にのらりくらりという表現がぴったりだ。多分何らかのアクションを起こすだろうが、それを公言すると中国民衆が怒るから公言しない。中国側も分かっているが、アメリカの真意を正すようなことはしない。)。
それでは、なぜ北朝鮮による韓国攻撃のパターンすらも安倍総理は公言しないのか。官邸が想定しているであろう幾つかの可能性がある。第一に、韓国側が反発する場合が十分に考えられる。実際には後方支援しかしないにしても、韓国社会には自衛隊アレルギーのようなものが強い。朝鮮半島有事が発生したとして、自衛隊は後方支援すらも許されないかもしれない。集団的自衛権の行使に関する議論で、韓国社会からの余計な干渉を避けるために、朝鮮半島有事を口に出さないのだろう(あくまでも韓国社会。但し、政府は社会の意向を強く反映する以上、政府の発言も強硬になりうる)。
そして、ここからが邪推なのだが(笑)第二の理由は日本国内の集団的自衛権賛成派の支持を失う可能性があるからではないだろうか。集団的自衛権の行使を必要だと主張する産経新聞なんかは韓国に対して強硬な姿勢を崩さないし、読者もそのような人が多いだろう。すると、韓国を支援することに繋がりかねない集団的自衛権に反発するかもしれない。「何で韓国を救助するために自衛隊が派遣されないといけないのか」というわけだ。つまり、集団的自衛権が現状で人気が無いのに、貴重な支持をさらに失う可能性があるのである。
実際には、多くの国際政治学者は北朝鮮による突発的な軍事行動を恐れ、東アジアにおける日米韓の協力強化が必要だと考えているし、防衛省も同様だ。韓国の国防部や国際政治学者も似たようなマインドを持っている人が多い。しかし、残念ながら、集団的自衛権に賛成する層と韓国を嫌う層はかなり被っている。そのため、安倍総理が表立って日韓の協力強化を目指す政策を謳うことは困難である。
本来は韓国や台湾における有事を想定しているはずなのに、近隣諸国への配慮だけでなく国内的な事情も絡んで、ホルムズ海峡の話ばかり出てくる。ホルムズ海峡における魚雷の設置自体がかなり無理のある想定である以上、ホルムズ海峡に自衛隊を派遣すること自体がかなり想像するのが難しい事態である。
こうした想像するのが困難な事態を例にあげて展開されている集団的自衛権の議論は不毛極まりない。本来は、自衛隊員が死ぬかもしれない、捕虜になるかもしれない事態、湾岸戦争のときのように何もせずに世界から後ろ指をさされる事態、というように集団的自衛権の行使と一口に言っても様々な切り口から議論されるべきなのである。右も左も、双方ともに集団的自衛権の行使がいかなる議論と結びつくのか、出来る限り明らかにした上で議論を展開してもらいたい。

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